BAGAN

2004年撮影。
 
バガン・ミャンマー連邦。
ボロブドール、アンコールワットと並ぶ世界三大仏教遺跡の一つで唯一ユネスコの世界遺産には未登録。
民主化が進む今、この国を代表する歴史遺産として近い将来きっと登録されうことになる広大かつ重要な歴史地域です。
11世紀。
ミャンマー初の王朝であるパガン朝の首都。
それがここバガンです。
仏教国ミャンマーのスタートもここにあります。
 

Sun set of Bagan

バガンの日没
 
バガンへは私は旧都マンダレーから船でエヤワディー川を下って入りました。
船着き場で降りて土手の急な坂道を登ると、もうそこは遺跡の街バガン。
古い寺院跡やパゴダの姿が壮大で美しい姿を見せていました。
しかもその姿は時々刻々と変化します。
とりわけ日没時と夜明けの神秘さは格別です。
大地と空の大きさだけではなく、人と時空をつなぐ仏教の深遠さえも感じさる空気で満ちているのです。

Shewezigone Pagoda

シュエズコン・パゴダ 
 
黄金色に燦然と輝く寺院。
金箔で彩られた寺院はやはりミャンマーやタイなどの上座部仏教独特のものです。
この明らかな異国の風景の中で佇んでいると、どこからともなく読経の声がを耳に届き始めます。
お経を読む、その音楽的な感覚に日緬の違いはありません。
その当たり前すぎるお経の響きが私たちの日本文化とミャンマー文化の共通性を意識させます。
数千キロの物理的隔たりが一気に親しいものに変化させる瞬間なのです。


 

Sulamani Temple

スラマニ寺
 
門前で車を降りて裸足で門をくぐる。
そして本堂に向かってあるき始めるとまたもや美しい景観に出会います。
太陽に照らされたスラマニ寺の本堂の黄土色。
その周囲の樹々の深い緑や青く澄む空。
お寺の門を通してそれを画枠に眺めてみるとまるで絵画の世界のよう。
バガンの寺院を設計した古の技師たちの優れた美的感覚に衝撃を受けます。
驚きは外観だけではありません。
寺院の中の土壁に描かれた数多くの仏画も圧巻。
このような優れた仏教芸術に溢れた世界がそこここに展開する。それがバガンの世界遺産的迫力だと思われました。

Nyaung U Market 

ニャンウー市場
 
遺跡の街バガンには大きなニャンウー市場があります。
旅に出かけると最も面白い場所はもしかすると市場かもしれません。
とりわけミャンマーではスーパーマーケットが普及していないこともあり昔からの市場が生活の重要な場となっていて食品から雑貨、衣類まですべて揃えることができます。 

バガンに限らずミャンマーでは耕運機を改造したようなトラックや英国植民地時代から使われてきたのではないかと思えるような古いバスが走っています。
でも、一番多いのは日本からの中古車かも知れません。
バガンでも土煙を上げながら走る「パルケエスパーニャ志摩スペイン村」の看板を付けたままの中古の近鉄バスに出会ってびっくりしたことがあります。
 

ここではトラックは時としてバスでもあります。
荷台に人々が乗っている風景を眺めると、
「なんとなくいいな〜。涼しいだろうな」
と羨ましくなってきます。
 

Tharabha Gate

タラバ門
 
新バガンと遺跡のあるオールドバガンの間にある城壁の門です。
9世紀。
ここは城を守るために当時の王が作らせた城壁で、今では街の通過地点を示すランドマークとなっています。
なんとなく活気があって綺麗なこの場所を私は暫し長ていました。
バスが通りすぎる。
あるいは自転車通学する高校生たちが爽快に走り去る。
そして赤いレンガと周囲の樹々の緑、太陽の光が程よいコントラスを成している。
こういう日常と古代がないまぜになって「生きている」という光景もバガンの魅力に違いありません。

Souvenir Seller Boy

土産物売の少年
 
とある寺院の中を見学していると、絵葉書の綴を持った少年が「土産物どう?」と売りに来ました。
いらないよ。
と、無視して方向を変えて歩いていくとすでに先回りして待っているんです。
さらに無視して別方向へ向かってあるくと、そちらにも先回りして待っている。
その素早さには目を見張りました。
もしかすると少年は何人もいるのか。
それとも瞬間移動できる術でももっているのか。
それを何度も繰り返していく内にその移動の速さが面白くてついに少年から絵葉書を買い求めました。
その絵葉書がまだ私の自宅のどこかにしまわれているはずです。


 
バガンの夜明け。
朝4時過ぎに目を覚ましてホテルから自転車でとある寺院を訪れる。
境内ではすでに朝の清掃が始まっていました。
薄暗い中を慎重にパゴダをよじ登ます。
これ以上登るのは難しいところまで来たところで腰かけ、 淡く明るくなってきた辺りを見渡します。
地上からは境内で箒を掃いている音が聞こえます。そして遠くからは時々雄鶏の鳴き声がこだまします。
やがて遥か彼方の地平線から太陽が昇り始めると数えきれないほどのパゴダの仏塔がシルエットとなって浮かび上がります。
神秘的で清々しく。
そしてとてつもなくダイナミックな光景が広がるのです。